理事長あいさつ

理事長 一般社団法人日本頭蓋健診治療研究会理事長 細野 茂春

細野 茂春先生ご挨拶

2025年6月
一般社団法人日本頭蓋健診治療研究会理事長
細野 茂春

 本研究会は、小児の頭蓋健診と治療に従事する関係者で構成される学術団体として、2020年10月31日に設立された。初代理事長は楠田聡先生がおつとめになり、礎を築かれた。頭蓋変形の原因の主体は向き癖による位置的頭蓋変形で、頭蓋縫合早期癒合症が最も重要な鑑別疾患となる。位置的頭蓋変形はある程度予防可能な疾患であるとともに、重症度によっては適切な時期にヘルメット矯正療法が改善に有効であることはエビデンスとして認められている。本研究会は、正しい頭蓋健診と治療に対する知識と技術の啓発を目的として、学術講演会の開催、他の関係学術団体との交流および連携、調査研究の奨励、情報や指針の提供等を行っている。そのため、小児科医、小児脳神経外科医、小児形成外科医、小児外科医、小児整形外科医、産婦人科医、助産師、看護師、理学療法士等、多職種および多領域の会員が参加し、会が構成されている。
 現在までの活動としては、第1回研究会を本研究会設立時に開催したのに続き、計12回の学術集会を開催している。新型コロナ感染症拡大のため、多くはWeb開催となったが、新型コロナ感染症が2類から5類に変更されて以降は会場に多くの方が参加し熱心な討論を展開した。さらに、2022年4月には、研究会有志を中心として、『小児の頭蓋健診・治療ハンドブック 赤ちゃんの頭のかたちの診かた』(メディカ出版)を刊行し、Springer社から翻訳版として2024年12月に『Handbook of Positional Plagiocephaly』が出版された。また、頭蓋変形治療の標準化を目指して、治療についての「留意点」を発出している。これらの活動は、頭蓋健診に関わる人材の育成と標準化に寄与するものと考える。
 さらに、頭蓋変形治療を受けた児のご家族を中心とした、「赤ちゃんの頭のかたちサポーターズ」が2022年に設立されたことから、本研究会と連携してご家族のサポート体制を強めていっている。特に、ヘルメット治療に必要な費用については、医療政策が深く関わるために、本研究会と家族の会の連携が重要である。
 小児の頭蓋変形の健診および治療については、わが国では比較的新しい医療分野であると言える。そのため、健診方法、診断法、および治療法の標準化は本研究会の最大の目的であるが、さらに、全ての小児が適切に健診を受け、必要な場合には適切な治療を受けることが可能な体制の構築も、重要な達成目標である。本研究会からの働きかけによって2025年4月に改訂された日本小児科学会の「小児科医の到達目標-小児科専門医の教育目標 改定第8版」に初めて習得すべき症候として“頭蓋変形”が取り上げられた。
 本研究会の目的の達成のためには、より多くの関係者が本研究会に所属し、相互の連携を深めることが必須である。より多くの皆様が本研究会に参加し、より多くのこども達の将来の健全な発育・発達が約束される状況になることを祈念しております。